心理療法と平和
もう30年前かと思うと、遠い過去の出来事ですが、ずっと私の心に残っていることがあります。 当時、定期的に活動していたグループがありました。その活動でご一緒だった方が、どういう流れだったかは覚えていないのですが、こんなことを語りました。 「私が生まれる前に戦争に行った父は、私を見ることなく戦争で死んでしまった。私は、父を恋しく思う気持ちと同時に、その父が戦争でしただろう加害を思うと、身を引き裂かれるように辛いのです。」 愛する人が、誰かを傷つけ、その地を蹂躙したのだということ。 その人の血が自分にも流れているのだということ。 涙を流しながら苦しそうに私に言っていました。 私の父と同じ年齢の方でした。 当時私は、何も言えなかった、何も返せなかったと思います。 ただ、その方の苦しみが伝わってきていました。 そして30年たった今でも、叫ぶように語った言葉と涙が、私の中でよみがえります。 その後、紆余曲折があり、私は心理職となりました。 光り輝く雷雲 臨床心理士養成課程の大学院の入学式。 研究所長がこんな式辞を述べられました。 「心理臨床は、心に平和をもたらすためのものです。 世界の平和のために、心理臨床を行うのです。」 その先生もまた、私の父と同じ年齢でした。 既にお亡くなりになっています。 現在受けているトレーニングの中で、世代間トラウマについて取り上げていました。 私は、あの活動仲間の方にセラピーを提供することはもうできませんが、このテーマが示されたときに、心理療法として取り組むことができるようになったと思います。 心理療法を通しての戦後処理。 心理臨床という「平和」のための活動。 心理療法というのは、お一人おひとりに対して提供するものですので、地球からすればごくごく小さな米粒のような意味しかないかもしれません。 でも、「心に平和」が、一人ひとりにもたらされること、 それを目指していきたいと思います。 「たった一人で見た夢が、百万人の現実を変えることもある。」 マヤ・アンジェロウ