ジェスチャーに込められている癒しの糸口

日本語でのコミュニケーションでは、他の言語と比べてジェスチャーが少ないようですが、カウンセリングセッションの中で、ふとしたジェスチャーが現れることはよくあります。


先日トレーニングセッションにおいて、私は、未だに忘れられないある嫌な経験を取り上げたのですが、その話をしながら、手で払うジェスチャーが出てきました。

セラピスト役の人と一緒にやりとりをしていくなかで、手で払おうとするジェスチャーの腕には力がこもっていることが顕著になってきました。

その腕の緊張をしっかりと感じながら、手で払うしぐさをゆっくりとやってみました。

払い終えると、力が抜け、涙があふれてきました。

あの時に本当はやりたかった腕の動きを、今、完了させられたことで、緊張が緩み、そうして涙が出てきたのです。

涙にはいろいろな感情や思いがこめられていました。




話しながら手を胸に当てるというしぐさは、よく現れます。

意識して置いているのではなく、話しながら何とはなく手が自然に動いて、胸に当てられて。

その手と、手を当てられている胸とに注目して、ゆっくりと留まってみると、やはり涙があふれてくることがあります。

やさしく触れる「タッチ」には、不安やストレスを鎮める意味や効果があります。


「みんなのセルフタッチング」中川れい子、日賀出版社
タッチについてわかりやすく書かれています


こんなふうに、ジェスチャーを含めた身体の動きには、自分を守ったり、助けたり、癒そうとする身体の智慧があるとして、それをより確かな経験として深めていくということを、カウンセリングセッションでは積極的に取り入れています。

無意識に自分でやっていることが、自分の身体が、安らぎや自由をもたらしてくれるのだということに気づくと、自分への信頼感が積み重なっていきます。