心理療法における「非暴力」について考える④

心理療法における非暴力の実践、最後のテーマは、内なる「暴力」です。


これを「暴力」という言葉で表すのは、「暴力」という言葉がもつ意味合いからすると違うかもしれません。

「暴力」は、ダメージを与えたり、脅かしたり、傷つけたりなど、非常に攻撃的なニュアンスを含みます。

ですが、その目的であり結果でもある「支配とコントロール」という点に注目し、その点からこれを「内なる“暴力”」として取り上げたいと思います。



「それは身体の叡智です」② ~身体の記憶を体験する

こちらのブログで書いたのですが、捕食者に捉えられたインパラは、ラッキーにも助かった後、激しく震え、その後立ち去りました。

この震えとその後の逃走がトラウマの治療に有効であることを発見したピーター・リヴァインは、ソマティック・エクスペリエンシング®というトラウマ治療のための心理療法を開発しています。

心と身体をつなぐトラウマ・セラピー
この本、出版社の廃業で現在は刊行してません


最近、知り合いの心理職の方のモニターを受けているのですが、それも、身体深部の震えを起こし、自然に解放していくということ行います。



震え。

これが起きると、人は恐怖や不安という感情が湧きおこります。場合によっては恥の感情も。

そうすると、震えを何とか止めようとして身体を硬直させてしまうのですが、そうして震えを止めてしまうと、震えは解放されません。

モニターで受けているのもトラウマ治療法の一つで、震えを止めずに、震えに任せる、身体に任せる、ということがポイントとなります。

つまり、自分に起きていることを「なんとかしよう」と、意識的、無意識的にコントロールしようとしないことが、解放にとって重要ということなのです。



こんなふうに、自分自身に対して、自分の身体に起きていることについて、何とかしようとしたり、何とかしたいと思ったりすること、

これ自体は、ごくごく普通に、誰にでもよくあること、誰でもよくやっていることです。

そして、良いことでも悪いことでもありません。



身体にとって必要なことを無視して、あるいは抑圧して、違うことを行うとき、それは身体に対するコントロール、つまり自分の身体へ「暴力的」であると言えます。

自分のさまざまな複雑な思いや感情を無視したり抑圧して、違うことを行うときも同じ。


でも、ただ、そうしていることに気づくことは大きな違いをもたらします。



このテーマは、以前にも様々な視点で書いていました。


身体に委ねる


涵養(かんよう)~自然に浸み込むペース


身体の症状と付き合う


「それは身体の叡智です」① ~オステオパシーの体験から



これまで書いた「心理療法における非暴力の実践」の3つの層。

心理療法では、これらのそれぞれと、この3つの層の関連との両方を視野にいれて、様々なことに気づいていくことを行うものです。