効果的なセラピーのために ②セラピストの質―1

次に、セラピストの質について取り上げます。


「質」は、3つが挙げられます。

心理療法の技術が十分であること、それが学術的理論に基づいていること

倫理を遵守していること、重視していること

相性


は、基本として、資格保持者であることが重要です。

国家資格である公認心理師以外に、いくつかの民間資格があります。代表的なのは臨床心理士です。

心理業務の資格はたくさんありますが、資格認定する団体が、公的な団体や学術的な団体かどうか、その団体が倫理要綱を持っている、といった点が判断基準になるでしょう。

資格取得まで、また資格取得後も、適切十分な知識と技術の維持、向上を求めている団体かどうか、資格認定団体のウェブサイトで確認したり、直接セラピストに確認できます。


倫理観を持ち、倫理的にセラピーを行っていくことは最重要です。

②は、公認心理師であれば法令があり、他の資格でも、それを認定する団体が倫理規定を設けています。

倫理については、以前のブログで書きましたので、こちらも参考にしてください。

社会構造的な問題の中で育ち、教育を受けてきている以上、無意識の差別や問題行為がない人はいません。心理職も同様です。

しかしそのような問題行為を行ったとき、起きたときに、自らを振り返り、問題に気づき、修正しようと努めることが心理職には強く求められています。


➂相性は、判断が難しいかもしれません。

こちらも以前のブログで書きましたので、リンクを置きます。

「カウンセリングが合わないと感じたとき」

「カウンセラーとの相性についての再考」




以上を踏まえて、クライエントさんにとって判断しやすいポイントとしてまとめてみます。


1)変化が起きているかどうか

変化や変化への期待を感じられなければ「質」は不十分かもしれません。その変化は、1回では感じられないかもしれませんが、数回たっても感じられないようだったら、セラピストに確認できます。

それに対して、納得がいかないとか、ピンとこないようだったら、そのようにセラピストに返すことができますし、そこで中断を判断してもよいでしょう。

心理療法における「変化」はいろいろな側面があり、また、ある程度長い時間をかけて「変化」を進めていくタイプの心理療法もあります。

クライエントさんの状況・状態によっては、例えば虐待等による影響が深く残っている場合など、心理療法の初期の段階では、変化はごくごくわずかしか起きにくいことが続きます。それでも、見通しをセラピストと随時共有することは重要です。

また、クライエントさんが求めていることとセラピストが提供していることにズレがあるかもしれません。期待していた「変化」の質や方向性かどうかということを、ご自身で振り返り確認してみることは、より合った心理療法・セラピストの選択にとって重要です。


2)嫌な思い、居心地の悪さなどがないかどうか

不快なこと、嫌なこと、納得がいかないことをセッションで経験したら、それは非常に重要な問題です。

セラピストの技術不足かもしれませんし、倫理的な問題かもしれません。一方で、セッションで起きるズレや不協和がクライエントさんの変容に重要なテーマであることもあります。

でも、クライエントさんが我慢する必要は全くありません。「不満」は、心理療法を進めていく上でとても重要なので、セラピストがきちんと扱わなければなりません。

日本的な対人関係では、相手に、特に「先生」のような立場の人に、不満を言うことへの抵抗があります。

また、虐待や暴力被害を受けてきた場合は、死活問題として心身に記憶されている場合がありますから、不満を訴えることができないし、自分は不満なのだと気づくことがないということも起きます。

そのときは、「良い感じがない」とか「これまでの自分の状況や対人関係と同じパターンだ」と感じたことがサインになるかもしれません。

でも、嫌なことを経験したときに、それをセラピストに言えないときは、言わずに中断する選択もあります。

そのように自分で選択したこと、それは自分にとってよいものを知っているからこそですから、そうやって選択し、行動したことを大切にしてもらいたいと思います。