投稿

5月, 2025の投稿を表示しています

効果的なセラピーのために ④心理療法の支えになるもの、効果へ良い影響をもたらすもの

イメージ
前回「 ➂クライエントさんの側面 」では、クライエントさんが自分の状態へ注目することがどのくらいできるかによって、カウンセリングの効果や速さに影響があるということについて書きました。 「自分の状態へ注目する」というのは、感情や感覚や考えが起きているときに、それに気づいていて、それを観察するということです。 これについては以前のブログでも取り上げました。 「 マインドフルネスはPTSDに禁忌か? ② 」 注目する 気づく 観察する これらがわかってきて、できるようになってくると、カウンセリングはグッと進みやすくなります。 そのためにできることとして、 ①理解する ②気づきの練習 があります。 ①は、 「コレモ(コミュニティー・レジリエンシー・モデル)」のウェブサイト で、無料の動画があり、とてもわかりやすいのでおススメです。 また、「『今ここ』神経系エクササイズ」もとってもわかりやすい本です。本には、②気づきの練習もあります。 ②は、神経系的な側面、身体的な側面、認知的な側面、これら全体的なやりかたがあります。 神経系的な側面の練習は、コレモの動画や「今ここ神経系エクササイズ」が安全でわかりやすいと思います。 身体的な側面では、ヨガ、アレクサンダー・テクニークや、フェルデンクライス、日本発祥のもの、他にもたくさんあります。 キーポイントは、身体を動かしたり触れたりして、それを観察するというタイプのものです。 認知的な側面では、ジャーナリング(感情や考えの日記)が代表的でしょうか。 全体的なやりかたでは、マインドフルネス系の集中トレーニング(MBSRなど)、ヴィパッサナー瞑想、自分自身の内側にあるさまざまな自分を観察する「パーツワーク」などがあります。 こちらの本は、世界中で高く注目されている心理療法の一つである内的家族システム療法(IFS)の本で、パーツワークのエクササイズも記載されています。 いろいろご案内しましたが、日常の中で、ふとした時間にすることも十分可能です。 食事をしているときの、味や香りや触感などを、ちょっとだけ時間をとって感じてみるとか、 考えがグルグルしてしんどくなってきたときに、同時に姿勢はどうなっているかな?と注意を向けてみるとか、 空を見上げて雲が目に入ったときに、どんな感覚がしているかな?と観察してみるとか、 こんなふうに、日常の中で、いつで...

効果的なセラピーのために ➂クライエントさんの側面

イメージ
心理療法が「効果」を発揮していくところには、3つの要素があります。 他者(カウンセラー)との関係に対して不安がなく、オープンになっていること 自分自身に起きていること、感情や感覚、思いに対する気づきや興味をもち、それをやや客観的にとらえること セラピーに対する目的や希望に対して主体性があること …なんですが、でも、これらが心理療法を受ける目的そのものですよね。 この3つのことに困難や不安を感じていたり、これらへの難しさがさまざまな問題や苦しさをもたらしているわけですから。 初めて会う他者(カウンセラー)に対して、最初から安心してオープンでいられないのは当然です。 日常会話とは異なる心理療法。でも何をするのか、どんなふうに話をしていくのか、わからないし、不安に思いますよね。 「楽になりたい」などといった希望は浮かびやすいですが、その「楽」な状態を経験したことがなければ、ゴールは霧の中のように感じるでしょう。 比較的重度のケースを長期にわたって取り組んでいる12人の熟練のセラピストに対して行われた研究によると、膠着状態に関連しているクライエントさんの側の要素として、「病理の重さ」と「それまでの人間関係上の問題」があげられています(Hill, Nutt-Williams, Heaton, Thompson & Rhodes, 1996)。 つまり、より短期間で、より深い効果を感じられるかどうかについて、クライエントさんの側のこのような要因も影響するというように解釈することもできます。 これはかなり前の論文ですので、近年言われているところでは、外受容感覚(自分の外の刺激に対する知覚)と内受容感覚(身体内部の感覚への知覚)の感度や正確さに関わる要因もあります( 福島, 2019 ) 。 他者(カウンセラー)との関係への不安や緊張感が強い傾向があり、苦しい感情や思いの渦の中にいて、何とか楽になりたいと望みつつも、それがどういうことかイメージしにくい… こういうことが強かったり大きいほど、心理療法をより細かく、より丁寧に進めていくことになります。 このようなことが、心理療法の全体流れにおいて、どのようなことを意味するのでしょうか? 心理療法は、大きく分けて3つの段階があります。 1つ目は、安定化の段階。 現在起きている問題や状況・状態について、「なんとかなっている」「大丈...