話したくないことは話さなくていい

カウンセリングでは、話したくないことは話さなくて構いません、もちろん。

こんな書き出しを読んで、ホッとするでしょうか。それとも、不安になるでしょうか。

その両方を感じるかもしれません。


話したくない話。

話したいけれど、言葉にならない、言葉にするのが難しい話。

秘密、というわけではないけれど、心の中から外には出て行かない、出て行けないようなこと。


話したくない、話せない、と私に言ってくれるならば、

それがあるのだ、ということを伝えてくれています。

それを伝えてくれていることを、大切にしたいと思っています。

また、それを伝えてくれることに深い感謝の気持ちがわきます。

クライエントさんの心の中に、重要な「何か」があるのだということを共有してくれたことに。



話をする、というのは、なかなか力がいることだと思います。

それが重要な出来事や記憶であるほど、そこには、たくさんの思いや反応が埋め込まれています。

相手に「正しく」理解してもらうためには、何度も何度も推敲するような労力が必要でしょうし、もしかしたら、もうこれまで散々その努力をしすぎてきて、ヘトヘトかもしれません。

話さなくていい、というのは、こういう労力を一人で負わないでほしいな、という思いがあります。

前回で触れましたが、「物語」をつくっていく過程をサポートしたいと思います。



話したいけれど、しんどくなってしまうということもあります。

その時の出来事が甦ってきて、その時に感じたことや感覚が強まっていくと、自分の手に負えない不安や恐怖感が大きくなります。

その時にそんなにも辛い経験をされたのですから、カウンセリングでまたそれを感じてほしくありません。

クライエントさんが、自分の心の中にあるそれと、距離を取りすぎるのでもなく、近づきすぎるのでもないぐらいを感じながら、その話のある一片に注目してみるということもできます。



”その話”を語らなくても、カウンセリング中の今、ここでは、たくさんのことが起こっています。

話さないでいいって言われてどんな気持ちになったか。

話したくないと思ったときに、どんなことが起きているか。

話さないでいると、身体や心では何が起きているか。

できれば伝えてもらいたいと思うのは、このような、「今、どんなことが起こっているのか」。

そこには、たくさんのものがあります。

カウンセリングはこんなふうにして進めていくことができます。