自分を主人公にする時間
自らカウンセリングの門をたたかれる方は、もしかしたら、自分のことよりも、自分以外の誰かのことを優先させてきた方が多いのかもしれません。
いえ、優先させてきたというのではなく、いつのまにか優先するようになっていた、という言い方の方が合っているように思います。
カウンセリングでは、クライエントさんが主人公です。もちろん。
ですから私は、クライエントさんに「それはどんな気持ちがしますか?」と聞いたりしますが、「えっ?」と一瞬戸惑われたり、自分じゃない他の誰かのことを話し出したりします。
私に一生懸命、出来事や状態についてお話してくださるかたも多くいらっしゃいます。
クライエントさんにとっては「一生懸命」ではないのかもしれません。
それが普通で、いつもの自分なのかもしれません。
状況や背景を理解するために、クライエントさんがお話してくださる内容は、もちろん大切です。
でも“私のために”話してくださる必要はないのです。
「今はあなたのための時間なので、自分のためにたくさん時間と空間をとって、自分のペースを大切にしていいんですよ」
と言うと、どうしたらいいか戸惑われて、緊張する方もいらっしゃいます。
(これらのどれが起きても、私はもちろんサポートします~)
自分の中で起こっていることに注意を向け、自分の気持ちや感覚を感じ、そうして自分自身を理解するようになってくると、クライエントさんは、過去の自分が、どれほど他の人のことばかり優先していたのか気づきます。
どれほど、自分自身を犠牲にしたり、後回しにしたり、抑圧していたか、
そして、自分で自分のことが、こんなにもわからなくなってしまっていたということに気づかれます。
クライエントさんが、自分自身に目を向け、自分の気持ちや感覚を感じ取り、ただそのままでいられるようになったり、
自分の気持ちや考えを言葉にするようになったり、
もっと言えば、自分はこうしたい!といった欲求や要望をはっきりと言えるようになるまで、
カウンセリングでは、ある程度の時間をかけて行っていきます。
これは、初めの頃は、とても居心地が悪くて、不安な気持ちになったりするのです。
言葉も知らない、初めての国に降り立ったような感じでしょうか。
あんまりにも慣れていなくて、あんまりにも初めてで。
でもカウンセリングでは一人じゃありません。
カウンセラーというガイドが一緒にいます。
それに、いきなり、私が勝手にツアーを始めることもしません。
カウンセリングの門をたたくというのは、きっともう、出発への思いがしっかりとあるのだと思います。
そしてそれは、片道切符の旅。
だって、もう戻る必要はないのですから。