効果的なセラピーのために ①心理療法の選び方―2
前回、心理療法は大きく5つに分けられると書きました。
ですが、200以上もある心理療法がこの5つのどれかに分類されているわけではありません。
また大きく5つに分類しているのは、心理療法が開発された歴史的な経緯、理論的展開をふまえた大きなカテゴリであって、それぞれの中にも様々な療法やタイプがあります。
心理療法の選び方として、前回のブログに書いたように、心理療法の種類による選択と、問題やテーマから選ぶやり方がありますが、別の視点からの選び方を提案してみようと思います。
1.セラピストと話(会話)をするかどうか
心理療法は、大きな前提として「セラピストと話をする」というものですが、「話をする」も、こんなふうに分かれます。
①話をしないことも可能
②エピソードや自分のことについて話をする
➂話をするが、エピソードや自分のことについて話をしなくてもよい
ドラマや映画では②の場面が多いのですが、心理療法は決してそれだけではありません。
話をすることへの不安や抵抗がある場合は、①を選ぶとハードルが低くなるでしょう。芸術療法や身体面を扱うタイプの心理療法などがこれに当たります。
逆に言うと、心理療法で話を聴いてもらいたいかどうか、ということとも重なります。
- 特に話を聴いてもらいたいというわけではない、心理療法を受けて問題が改善されるなら、いろいろ話さなくてもよい →①または➂
- 話を聴いてもらいたい。自分のペースで話したい →②
- 話をするのが苦手、不安、緊張する →苦手などが強い場合は①、何とかなる場合は➂
2.セラピストにどういうことを期待しているか
次に、1と重なりますが、セラピストにどんなふうにしてほしいか、という点から整理してみましょう。
共感的に聞いてくれる、否定しない、サポーティブである、あたたかさや安心感を感じられるというのは共通するベースですが、セラピーの進め方のスタイルは次の3つのどれかが中心(メイン)になります。
- ゆっくりじっくり話を聴いてほしい、私に合ったペースで会話をしたい
- 具体的な提案やアドバイスがほしい、一緒に考えてほしい
- 何らかの体験や作業をしてほしい
これはセラピストによる違いというよりも、そのセラピストが行う心理療法の種類の違いによるものです。
3.入りやすいチャンネルは何か
人の体験をつくっている要素は以下のようなものがあります。
- 思考、認知(考えること、理論的なこと、整理)
- 行動(実際にやってみる、身体をつかったり身体の動き、身体を動かす)
- イメージ(象徴化、空想、アート等の表現)
- 感覚(五感、心臓の鼓動や呼吸などの身体の内側の感覚)
- 感情(気持ちを感じたり表現する)
200以上もある心理療法では、これらのどれかに重点を置いて進めているタイプのものと、これらすべてを扱うタイプのものがあります。
自分が得意だったり、興味があるチャンネルだと、抵抗感が少なく始めやすいでしょう。
ここではそれぞれの心理療法に上記のどの特徴があてはまるかを記しませんが(公式・共通認識的に分類整理されていないため)、それぞれの心理療法の特徴について書かれたものを、このような視点から見てみると参考になるのでは…と思います。
ちなみに、私が扱っているAEDP™とSPは、
エピソードについて話してもよいし話さなくてもよいのですが、エピソードについて話すだけでは効果につながらないため、話しながら体験されているものに注目していきます。エピソードなどについて詳しく話さなくても進められますし、むしろ、詳しく話す時間よりも体験する時間を多くとったほうが、変化をより早く大きく感じやすくなります。
体験していることをある程度セラピストに話してもらうよう促しますが、強制ではありません。言葉にすることやセラピストに説明することが目的ではなく、体験をセラピストと共有すること(一緒に体験していくこと)、自分で体験を感じていることが重要で、そのような体験がより進んでいくサポートのために、ある程度体験内容をセラピストと話していきます。
提案やアドバイスについては、心理学的な視点からのヒントを提供しますが、重視しているのは、セッションにおいてクライエントさん自身から現れてきたもの、セッションにおける変容の体験とその理解です。クライエントさんが実際に体験したものは、クライエントさんの中に記憶されやすくなるためです。そしてそれをセッション後にも維持できるよう、一緒に検討します。
クライエントさんが得意なチャンネルから入りますが、できるだけ全ての要素にアプローチし、クライエントさんの全体、統合が体験されるよう進めます。チャンネルが豊かになると、変化はより深まりや広がりを持つようになります。