効果的なセラピーのために ①心理療法の選び方―1

心理療法は本当にたくさんあります。

英語のWilkipediaでは200以上の心理療法が掲載されていますが、ここに載っていないものもあります(私が提供しているものでは、AEDP™はありましたが、センサリーモーター・サイコセラピーは掲載されていませんでした)。

こんなに数が多いため、心理士も精神科医も、すべての心理療法の訓練を受けることはできません。

その心理療法の公式機関による訓練を受けてきた心理療法、公式機関によらない団体・個人が開催する研修に参加した程度の心理療法、見聞きしたことがあるだけの心理療法、そして、名前も知らない心理療法もあります。

一人の心理士や精神科医が熟知できる心理療法の数が限られるため、全ての心理療法の中から、クラエイントさんに最適な心理療法を提示・提案することは、現実的には不可能です。自分が十分知らないものを提案することはできませんので。

一方で、クライエントさんの問題やテーマは、セラピストが訓練を受けた心理療法でアプローチできる場合が多くあります。

ただそれが、クライエントさんが求めているアプローチかどうか、というのは別です。


こちらのサイト(英語)では、アメリカでは大きく5つのタイプに分けられると提示しています。その特徴を一言だけで表すとすると、下記のようになります。

  • 精神分析/精神力動療法 → 無意識に焦点を当てる
  • 認知療法(認知行動療法) → 考え方に焦点を当てる
  • 行動療法 → 行動に焦点を当てる
  • 人間性心理療法・パーソンセンタード心理療法 → クライエントの力に焦点を当てる
  • 統合的心理療法 → その他(上記を統合したもの、そのどれでもないものも含む)


日本でも、心理士が行うのはたいていこの5つに分けられます。

アメリカでも日本でも、心理士はさまざまな心理療法の訓練を受け、いくつかをブレンドして提供していることが多いです。

日本の特徴としては、心理療法それぞれの認定機関の公式な訓練を受けていない心理士や、公式認定をもたない心理士のほうが多くいること、より現場に即した形で多様な心理療法の理論やスキルをブレンドして提供していることが多くみられます。


どの心理療法が効果があるのか、どのような問題やテーマがどの心理療法が適しているのかという研究は、これまでも行われてきました。

こちらのサイト(英語)では、効果研究を踏まえた治療法選択のリストが提示されています。

クライエントさんの問題や症状がはっきりしていて、かつ、このリストに掲載されているなら、ここで示されているアプローチを第一選択として考えるのは安全でしょう。

しかしここにも書かれているように、リストにない心理療法が根拠(エビデンス)不十分だということはありません。

私が現在訓練中のセンサリーモーター・サイコセラピー(SP)の創始者のパット・オグデン氏はすばらしいトラウマ・セラピストなのですが、SPは非常にクライエント個別でセッションを展開するため、効果研究のデザインができない、と話していました(それで、グループでのセラピーはある程度枠組み設定ができるため、効果研究を検討中だそうです)。

また、「根拠(エビデンス)」は医療・保険制度が求める枠組みに沿って研究が構想・実施されるので、そのような研究スタイルに合う心理療法が「根拠(エビデンス)がある」という結果をもたらしやすいという側面があります。


一方で、5つの心理療法のタイプによって治療の効果に違いはほとんどなく、むしろセラピストの個人差のほうが、治療効果の違いが大きいということが明らかになっています(杉原保史(2025)心理職の訓練における専門知と実践知 一般社団法人 日本臨床心理士会雑誌 33巻1号  pp.6-13.



あまりにも種類の多い心理療法

受けてみないとわからない違い

心理療法の種類によって効果に違いはないという研究結果


より混沌とした気持ちになったかもしれません…。


踏み跡がないような森の中でどうやって方向を見つければよいか?



そこで、心理療法の選び方、求めているアプローチはどういうものなのか?について、

上記のような分類からではなく、できるだけクライエントさん目線書いてみたいと思います(つづく)。