「進撃の巨人」あの愛はトラウマ反応なのか?①

進撃の巨人」。

子どもがお世話になっている先生の大推薦で何とはなしにアニメ版を見始め…

3回見てしまいました…。

深い。

奥深い世界観と複雑なストーリー構成。個性的な登場人物。

(3回見たのは、ストーリーの伏線が難しくてわからなくなってしまいリピートしたというのもあります。)

世界中で大人気だというのは頷ける超大作です。



「進撃の巨人」はたくさんの批評があるようですが、先日見つけたこちらの評は、臨床心理学の視点が取り入れられていて、たいへん興味深いものでした。


『進撃の巨人』ミカサが始祖ユミルに選ばれた理由 “反逆”としての他者とのつながり(文=角野桃花)


評のテーマは、「傷ついたものはどうして特定のひとりから与えられる愛情を求めずにはいられないのか」。


ここで取り上げられているのが、ジーク、ミカサ、始祖ユミル。

この3人にはそれぞれ、はたからみると理解しがたいほどの強い思慕を抱く人が存在します。

この記事では、「自分の生が脅かされる感覚、そこに突如として差し込む一筋の光、そしてそこへ向かう信奉と恋慕」が共通していて、それを、心理学の「転移」という概念を用いて解説していました。

彼/彼女らが「愛」「親愛」だと認識していたその思いは、「転移」によるものだったのではないか?

そしてそこからの解放のストーリーなのではないか、

というのが、この評の主張でした。



「転移」は、心理学では非常に重要な概念(理論)で、精神分析という治療を行っている中で、患者が分析者(セラピスト)の中に、自分の幼児期に重要な役割を果たした人物(親など)を再現しようとする心的な動きのことを言います。

確かに、恋愛や思慕の情といった深い関係性には「転移」が起きることがあります(逆に言うと「転移」によって恋愛や思慕の情が生まれるということにもなります)。

あたたかく幸せに満たされる”愛”の感情だけでなく、痛みがあったり、強い執着や不安感があったりなどの複雑な感情を説明する概念です。



ここで、トラウマという視点から見てみると、「進撃の巨人」の登場人物たちの情愛は、また違ったものとして浮かび上がってきます。

PTSDは、それが1回のエピソードか複数回のエピソードかに関わらず、トラウマエピソードに対する神経生理学的な反応パターンが現在も残っている状態です。

彼/彼女らに起きた出来事・経緯を追うと、彼/彼女らがそれぞれ相手に向けた「親愛」はトラウマ反応なのか?と考えることもできそうです。

そうすると、あの「愛」もトラウマ反応なのか?



ということで、次回へ続き、進撃の巨人の登場人物をトラウマによる反応という視点から見てみようと思います。