味わう ~マインドフルネスはここにある
細い道路沿いのコインパーキングに駐車しようとしたとき、車の前に小学1年生ぐらいの女の子が歩いていました。
その女の子がいたので、切り返しができずにいました。
大雨が降った直後。道路に水たまりができていました。
女の子の足が急に止まりました。
女の子は、一心に水たまりを見つめ、それから、そーっと足を踏み入れます。もう一方の足も、そーっと踏み入れました。
水面がかすかに揺れながら波紋が広がります。
この、たぶん時間にしたらほんの1,2分ぐらいの出来事。
女の子が体験していた世界が、それを見ていた私にも伝わってきました。
水たまりを見つめる集中した感覚。
ゆっくりと足を踏み入れ、靴が水に触れていく感覚。
それを受けて水が動きを作り出すところ。
靴が水に及ぼしているものが全身に広がっていく。
カウンセリングの中では、意図的に、このような体験の時間へと進んでいきます。
実際に周りにあるものを使ったり、イメージの中だけで進めることもありますが、
集中して、ゆっくりと、そしてとても繊細に丁寧に、自分の身体、自分の内側で起こっていることをみていきます。
たったそれだけのことなのですが、とても豊かな体験の世界がそこにはあります。
そこで体験されること、そして、体験することそのものが、多くのこと、必要なことをもたらしてくれます。
ですから、どんな体験も、どんなことも全て起こっていることには「意味」があるのです。
女の子が水たまりを味わったほんの1,2分ぐらいの時間ですが、この女の子にとって、これがこの時にとても重要なことだったように、
そしてそれを(たまたま)見ていた私にも「豊かさ」を一緒に味わえたように。
「味わう」。
女の子はぴょんと飛び出し、その後はもうすたすたと歩いて行きました。
きっと、女の子はこの経験は過ぎ去り忘れていくでしょう。
でも、このように経験したということ自体は、女の子の「生」に積み重なっていくものだと私は思います。
カウンセリングも、毎回毎回起きる「生」を積み重ねていくものです。