「たいせつなのは、自分のしたいことを、自分で知ってるってことだよ。」
ムーミン好きな方ならきっとご存知の、スナフキンの名言。
『ムーミン谷の夏まつり』です。
洪水で流されたちびのミイが裁縫かごの中で眠っていると、偶然、スナフキンに出会い、食べ物をもらいました。
十分食べたかどうか、スナフキンはミイに聞きます。ミイは、「また眠くなっちゃった。いつもポケットの中が、いちばんよく眠れるの」と言いました。
それに対してスナフキンが言ったのがタイトルの一文です。
そしてスナフキンとミイが歩いていくと、公園がありました。
ですが、「公園への立ち入り禁止」と書かれた看板が立っています。
公園なのに!
クライエントさんがこの場面について話してくれまして、私ももう一度この本を手に取りました。
公園には公園番の夫婦が住んでいて、そこに親がいない24人の子どもたちが毎日森からやって来ます。
公園の木々はきっちりと刈り込まれ、道はパキッとまっすぐ。
そして禁止の立て看板がたくさん立っています。「わらったり、口ぶえをふいてはいけない」「飛びはねるべからず」。
公園番の夫婦が公園を(子どもたちを)管理・監視しています。
こういうことが大っ嫌いなスナフキンは、片っ端から看板を抜き、子どもたちに「好きな場所へ行っていいんだよ!」と言いました。
でも子どもたちは誰も行こうとしません。
スナフキンについて行こうとするので、悩みつつスナフキンは子どもたちを連れて先へ進んで…。
子どもたちの様子は、とても示唆的だと思いました。
たくさんの禁止のメッセージと、それを見張る強い他者。その中にずっといると、「自分」がしたいことがわからなくなってしまう様子が現れています。
自分は何を求めているか。自分がしたいことは何か。
看板からも公園番からも解放されたのに、24人の子どもたちは自分のしたいようにすることができません。
代わりに今度はスナフキンにまとわりついています。
日本の子どもたちは、あふれる「禁止」のメッセージのなかで育っていると思います。
ブラック校則はその象徴。
明示されたルールだけでなく、暗示的なルールは「空気」として漂っています。
禁止のメッセージはこんなふうに、全て周りからきています。
そのメッセージは、大きいこともあれば小さいものもあり、大切なこともあれば、取るに足らないようなこともあります。
周りからきた禁止のメッセージはいつのまにか自分の中に入り込み、自分で自分に「禁止」をかけていきます。
「禁止」されていることに反すると、罰が与えられます。罰は、禁止が有効に働くために必要なものなのです。
罰は、人の心にどんなふうに働くでしょうか。
長くなってきましたので、次回に続けたいと思います。