自分が、自分の一番の友だちになる

カウンセリングで行うことを一言で述べるとするならば、「自分が、自分の一番の友だちになること」です。


苦しんだり悲しんだりしている中で、最も苦しめたり悲ませているのは、実はクライエントさん自身であるという側面があるのです。


「自分は不十分だ」「自分はたいしたことない」「自分が悪い」というように自分を責めていたり、

時々うける褒め言葉や喜びの言葉を、「受け取るに値しない」とか「気を遣って言っているに違いない」と受け取れなかったり、

もっとより良い自分に、より素晴らしい自分にならなければと追い込んでいたり、

辛くて苦しい気持ちを閉じこめて耐えさせようとしたり、

周りから攻撃されているのがわかっていても、何もできなかったり。


自分を苦しめたり悲しませるやり方は、こんなふうにいろいろです。


こんなふうに自分に厳しくなっていたり、自分自身に対してお手上げな気持ちになっているのには、もちろん、理由や背景があります。

緊張感をもって生きてこなければならなかったでしょうし、それが続いて感覚がマヒしたようになってきていたりもします。



カウンセリングで行うのは、こんなふうに自分を攻撃したり、いじめたり、発破をかけたりしつづける自分ではなく、

ただ一緒にそばにいて、肩を抱いたり、見守ったり、やさしく声をかける自分を育てていくことです。

作家の高橋源一郎さんは、人生相談の回答で「あなた自身を救い出してあげる」という表現を度々されています。


「誰にも相談できません」高橋源一郎著、毎日新聞出版


「自分を救い出す」。

そのために私がカウンセリングで行うのは、クライエントさんに、「あなたが思ってるような、そんな自分じゃないよ」ということを伝えていくことです。

素晴らしいことがいっぱいあって、できていることもいっぱいあって、

ものすごく頑張っているし、よくやっているし、

うまくいったかどうかや、結果がどうかではなく、これまでの「道のり」、そのプロセス、試行錯誤、それはただただ、すごいことだった!ということ

これを私は何度でも何度でも伝えたいのです。

まず、私が手を差し出していきたいのです。


差し出した私の手が見えて、その手をそっと握ってみようかと思えたり、

私が一緒にいるということを感じてもらえたりして、

そういうことに少しずつ慣れていくうちに、私の声がクライエントさんの心に届いていって、

そうして、自分を慈しむ自分が生まれてきます。

初めは恐る恐る、ほんの少しだけ向けていた優しいまなざしでも、独りぼっちで奮闘していた「自分」にとっては、ビックリするような出来事だと思います。

あんまりビックリさせすぎないようにしつつ、

でも、もう二度と独りぼっちにはさせないように、

ちゃんとそばにいて、心を、眼を、手を離さないようにしていく、

そういうプロセスを進めていきます。