カウンセリングとカウンセラーへの感謝の気持ちの本質とは
私が心理職としての勉強と訓練を始めたころ、
「『先生のおかげです』とクライエントさんに感謝されるようなカウンセリングは失敗だよ」
ということを、何人かの先生に言われました。
無理のない自然な経過の中で、クライエントさんが、自らの力で変化していくこと、
カウンセラーの“おかげ”ではないと思うくらい「自然に起こったこと」で、
カウンセリングはなくていいや、と、自分でやっていきたくなるような
クライエントさんが自らの力を自然につけて、自然に「卒業」していくようなカウンセリングが“良い”カウンセリングであり、カウンセラーとしての力なのだ、
ということを教えられました。
私が行っているカウンセリングのアプローチであるAEDP™セラピーはこれとは全く逆で、
カウンセリングにおける変容の経験が、人生における大きな体験の一つとして記憶に残るような、明確な体験を重視しています。
それが、カウンセリングの効果の重要な要素の一つであるという考え方です。
AEDP™セラピーの訓練を受けて思うのは、「感謝されたら失敗だよ」と言っておられた先生方がみな、私にとっては心に深く残る、非常に印象深い方であるという逆説的な思いです。
情が深く、人間性が豊かで、命や人生の真理を体現しているような深みがあり、
優しい声、そして眼差しがクリアなのにあたたかく
大きな存在感があります。
だから私の心の中には、教えを受けた先生方の存在がずっとありますし、
先生方に支えてもらってきた、先生方の“おかげで”今の私がいる、という
深い感謝の思いがあります。
このような思いは、心理職として、一人の人間として必要不可欠であることを、今の私ははっきりと感じています。
「生きていてよかった」と感じられることはいろいろあると思いますが、
人との出会いが意味あるものとして心の中に感じられるとういうことは、その大きな一つではないでしょうか。
だから私は、クライエントさんが私への感謝を示してくださったとき、
二重の意味で「よかったー!」と思うのです。
一つは、クライエントさんにとって、私との出会いとカウンセリングが意味あるものとして明確に体験されたということ、
そして、感謝の感情がもたらす喜びをクライエントさんが感じていること。
深い感謝は、人とつながり、自分自身ともつながりを感じるときに生まれてきます。
このようなクライエントさんの「つながり」の体験が、私にも満たされる感情として反響し合います。
感謝という気持ちの本質。
それは深いヒーリングです。
カウンセリングが適切に進んだ終盤には、大事にしたい体験です。