自分軸について
「自分軸」。
クライエントさんからこの言葉を教えていただきました。
自分の主体性を表す、わかりやすい言葉だなと思いました。
インターネットで検索してみると、いろいろ出てきました。イラストレーターでエッセイストの中山庸子さんは、タイトルずばり「自分軸のつくりかた」という本を書かれていたり、自分軸についての動画や、「自分軸手帳」というのもありました。
私はクライエントさんにお会いしていて、自分軸がない人はいないな、と思っています。
でもクライエントさん自身が自分軸を明確に感じられるようになったり、その自分軸からものごとを感じたり、発言したり、行動したりするまでには、いくつかのプロセスを踏んでいく流れがあります。
「自分軸」は、自分が考えること、思うことを決めたり、実行するという意味のようです。
このような決定や実行のベースには、自分自身についての体験があります。
それは身体の感じであったり、気持ちが感じられることであったり、今までとこれからを想ったりすることなどの体験。
感じたり思ったりする自分がいる、という体験です。
ごくシンプルな例はこんなこと。喉が渇いたあなたは、目の前にある水が入ったコップに手を延ばし、コップの水を飲んだとします。
これは、あなたがしたことですね。他の誰かではなく。
そう、「自分」がいます。喉が渇いたと知っている。コップの水を飲む行為をしたのは自分だと、あなたは知っている。
そして水が喉を通って行きました。その感じ。
乾いていた喉が潤って、ちょっとホッとした、その感じ。
それは他の誰でもない、あなたが感じた、あなただけの感覚。誰も邪魔することができない、あなた自身の感覚。
当たり前すぎるような、自然すぎるようなことですが、自分を感じるベースは、こういう感覚への注意からつながっていきます。
あなたがコップの水を飲んでいるのを見ている人がいました。
A「外は暑かったから、お水を飲んでホッとしたでしょう」とやさしく声をかけた人。
B「忙しいんだから水ぐらい自分で用意して飲んで!」とイライラして顔をそむけた人。
C「こんな少しのお水じゃ水分補給にならないよ、もっと飲まないと」と不安げに見つめる人。
潤ったあなたの身体は、こんなふうに言われてどんな感じがするでしょうか。
あなたの意思で手を延ばしてコップを取り飲んだという行為に、意味づけが加わる感じが生まれると思います。
Aは、水を飲んだ感じはそのまま良い感じや、自然な感じとして経験されるのではないかと思います。
一方、BやCは、あなたの身体が感じた潤いやホッとした感じを変えてしまうでしょう。
こうやって他者から影響を受けていて、それが自分の感覚(自分軸)を変えてしまうような感じがしているならば、元に戻りましょう。
「元」は、あなたの身体の感覚。あなたの内側の感じ。
さきほど、「カウンセリングではいくつかのプロセスを踏んでいく」と書きましたが、それがこういうものです。
ゆっくりと、自分の内側に目を向けていく。
それをそのまま感じる。
そうやって感じたことを大切にする。
その感じを表現して、他者(カウンセラー)に伝えてみる。
カウンセリングは、もうそこにある「自分軸」に戻り、それを十分体験する時間です。