「迷惑をかけてはいけません」の呪いを解く

「人に迷惑をかけないように。」

親や周囲の大人に言われてきたためか、こう思っている人は多いのではないでしょうか。

「迷惑」というのは、嫌な思いや不愉快な思いをすることを意味するので、「迷惑をかけない」というのは、人にそういう思いをさせないようにすることをさします。

ですが、「迷惑」という言葉のあいまいなところが拡大していって、そして「空気を読む」ということが相乗して、人をわずらわせてはいけないとか、負担をかけるべきではないとか、そして人の領域に踏み込むべきではないというようなニュアンスにまで広がっているように思います。


私は、これを「迷惑をかけてはいけませんの呪い」と命名したい。


呪いというのは強烈です。

呪いは他者(周囲)からかけられ、自分が呪いをかけられていることに気付きません。そうして苦しい状態が続いてしまいます。


「迷惑をかけてはいけませんの呪い」の背後にあるのは、我慢と頑張りを美徳とする価値観や社会ではないかと思います。

協調性が過度に求められ、差別、偏見、抑圧があちらこちらにある社会の中で、我慢させることはまるで空気のようにあって、頑張ることはどこでもいつでも求められています。

私が育ってきた中でもありましたが、娘の学校生活を通して、それがますます強くなっているのだと感じます。

これは、本当に、あまりにも大変すぎる。


本来の「迷惑」を越えた意味の広がりによって、「迷惑をかけてはいけませんの呪い」は孤立を生んでいます。

自分が抱える問題、困難、苦難を、人に頼ったり、助けてもらったりしてはいけない、すべきではないと考えてしまいます。

人に頼るのは、負担をかけてしまうかもしれないから。

それは自分の頑張りや我慢がまだ足りないから。

だから人に頼ったり助けてもらうようなことは恥である、と。

そしてますます、人に頼れず、助けてもらえず、孤独感が増していきます。



「迷惑をかけてはいけませんの呪い」の強烈さを実感したのが、先日発表された調査結果でした(特定非営利活動法人『あなたのいばしょ』が実施した「コロナ下での人々の孤独に関する調査」)。

対象者3000人の中で、40%の人が孤独を感じていて、そして若年層の孤独感が強かったのです。

この結果を見て、とても胸が痛かったです。コロナ下とはいえ、日本はこんなにも寂しく厳しい社会になっているのだということを、数字で実感しました。



そういう中、カウンセリングにアクセスしてくれたことがどれほど大きな一歩かを想像します。

クライエントさんは、「第三者のほうが話しやすい」とよく言いますが、最初の一歩には緊張と不安があっただろうと思います。



「迷惑をかけてはいけませんの呪い」を解くのは、

あたたかさ、

つながり、

歓迎、

オープンさ、

ユーモア…



「人はつながりを求めるもの。(we are wired to connect.)」

私が行っている心理療法、AEDP™セラピーの創始者ダイアナ・フォーシャのことばです。


カウンセリングで、たくさん提供したいもの。

クライエントさんにいっぱい感じて、体験してもらいたいものです。



そうして、「迷惑をかけてはいけませんの呪い」を解いて、

それは『迷惑』じゃない、むしろ真逆で、

そんな社会の空気の中でヘルプを求めるのは勇気ある行為だと、あなたは勇敢なのだと、

ヘルプを求めるのは、人とつながり、痛みを共有し、支えを感じていく、価値あることなのだと感じてもらいたいなと思っています。