「生きていくうえで大切なことは何だと思いますか?」
夏休み中に、中学生の「職業人インタビュー」を受ける機会がありました。臨床心理士に興味を持つ中学生二人です。
今は学校でキャリア教育があるので、こういうプログラムがあるんですね。
臨床心理士という仕事に興味を持ってくれて、とてもうれしかったです。
質問の一つに、「中学生のときは、将来どんな仕事をしたいと思っていたのですか?」というのがありました。
私が中学生の時は、こういう授業がなかったためかもしれませんが、将来何になりたいか、どんな仕事をしたいか、よくわかりませんでした。
何も考えられていなかったなーと思いました。
私は中学生のとき、特に後半、もどかしい苛立ちや無力感で苦しかったことを覚えています。
当時は、トラブルが重なったり、転校して気持ちがなかなか切り替えられなかったことが背景にあったのだろうと思います。
もう小さな子どもではなく、いろいろなことが見えてしまう。
でも、自分でできることがあまりにもなさすぎる。
そういう、思春期特有の苦しさだったと思います。
中学3年生の夏、どうしても以前住んでいた場所に行って、以前の友だちに会いたくなり、一人で長距離バスに乗って遊びに行きました。
その帰りのバスで、隣に座った壮年期ごろの男性に話しかけられました。
「中学生か~、一番いい時期だなぁ~。」
私は、「はい」とは言えないし、「いいえ」とも言えず、答えられずにいました。
大人にとってはそう見えるのかもしれない。でも私はこんなにたまらない気持ちの毎日を過ごしている。
彼とのやりとりで、抱えていた苦しさと孤独感をハッキリと自覚した出来事でした。
中学生の時にそういう私だったので、インタビュアーのお二人の準備の素晴らしさに感嘆でした。
お二人はとてもしっかりと準備をし、たくさんの質問を考えてきてくれていました。
私はてっきり、臨床心理士ってどんなお仕事ですか、とか、どんなふうに働きますかといった、具体的な質問を受けると思い込んでいたのですが、もちろんそういう質問はちゃんとありましたが、もっとずっと哲学的な質問がたくさんありました。
でも、それはそうですね。
「働く」って、「生きる」ということですよね。
だから、単なる職業選択ではなく、もっと深く考えるのは当然ですし、そういう哲学的な質問も当然のことでしょう。
お二人が、将来のこと、仕事のことを、じっくりと考えて準備したということがよくわかりました。
一番難しかったのが、終わりのほうで出てきた、この質問です。
「生きていくうえで大切なことは何だと思いますか?」
えっ、と窮しました。
「...とても難しい質問です...。」
そしてしばらく考え込みました。
「...その答えを、私はまだはっきりと言葉にできていないと思います。」
そして、答えを絞り出すように言いました。
「とにかく、生きる、ということだと、今は思います。」
お二人が少し笑顔になったように見えました。
その答えが何か、私は今までも考えてきましたが、これからも考えていくと思います、と付け加えました。
みなさんにとっての「生きていくうえでの大切なこと」は何ですか?