「けど、人って本当に辛いとき、黙るしかないんだね」
「けど、人って本当に辛いとき、黙るしかないんだね」
崔実さん著作の「pray human」の中の会話です。
本当に辛いとき。
それは言葉にならない。言葉にできないもの。
あまりに深すぎて、重すぎて、
あまりに強すぎて、苦しすぎて、
語るよりもずっと手前のところでうずくまるような。
言葉になる前に引きずり込まれてしまうような。
そして痛みを言葉にすることで、
それが「ほんとう」になってしまう不安や恐怖。
沈黙は、カウンセリングの中でよく生まれます。
私はむしろ、クライエントさんが沈黙の中に留まれるよう、促していきます。
他者といても沈黙していられる、
それは一人ではない、他者(私)がいるなかで、
自分の内側に、
自分の世界に入って、
じっくりとそこに留まること、
その世界で感じられるさまざまな感情や感覚を受け取っていくこと
カウンセリングでの沈黙は、そういう時間です。
初めてのセッションで、何を話したらよいか戸惑って、言葉にならないという方は少なくありません。
そういうとき、私は、
「言葉が出てくるまで、ゆっくり待ってみてあげませんか」
と言うことがあります。
私(セラピスト)のペースではなく、クライエントさん自身の内側から出てくるペースを、一緒に大事にしたいなと思うのです。
そうすると、ただ、一緒に沈黙の中にいる時間が流れることがあります。
クライエントさんの目から涙がこぼれてくることもあります。
「でも、その方がずっと痛みが伝わってきた。人が沈黙しているときこそ、最も耳を傾けるべき瞬間なのかもしれないね」
「pray human」での、タイトルの会話のあとに続く言葉です。
「沈黙に耳を傾ける」。
カウンセリングではもう少し付け加えたい…。
一緒に沈黙する。
その沈黙のそばにいる。